ユニバーサルデザインと家具


4  下駄屋の店先で

 

少し考えてみただけでもわかりますが、

現在流通している家具が、ほんとうに使いやすい、最高のデザインかというと、

全然そんなことはありません。

力がないと使えなかったり、

背丈が低いと使いづらかったり、

そんな経験はどなたにもおありでしょう。

こうした現象の一つの原因として、

作り手と使い手の遊離ということが挙げられると思います。

 

資本主義社会の典型的な家具工場では

デザインとオペレーションが分担され、

その中でも細かい分業がなされています。

そして生産の効率化による経済性が、

多くの場合、市場での有利不利を決定付けてしまう傾向があると思います。

そこには使い手の声というものをフィードバックする回路がありません。

デザイナーは統計に基づいた人間工学や

JIS 規格の寸法表を見て設計しています。

 

そうした「ものづくり」のスタイルと対照的な例として、

下駄屋さんの「ものづくり」を考えてみたいのですが、

昔の下駄屋さんは店先に下駄の見本と雛形を並べておき、

お客さんの注文に合わせて、

雛形を誂え、調整して売っていたそうです。

たいへんシビアな現場ですね。

自分自身も含めてですが、

果たして現代の家具メーカーが

このような真剣勝負に躊躇なく挑むことができるかどうか。

これこそが「ものづくり」の一つの原点ではないでしょうか。

 

 

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1  家具デザインの潮流/ 2  機能性の展開/
3  時を経て生き残るデザイン=ユニバーサルなデザイン?/
4  下駄屋の店先で/ 5  ユニバーサルデザイン家具への展望